川口英俊の晴耕雨読ブログ

施本「仏教~一枚の紙から考える~」

施本「仏教 ~ 一枚の紙から考える ~」


一、はじめに
二、一枚の紙から・仏教の基本法理の理解
三、一枚の紙から・①而二不二《ににふに》
四、唯識論について
五、一枚の紙から・②而二不二《ににふに》
六、一枚の半紙から・補足余談
七、悩み・苦しみを超えて
八、最後に

二、一枚の紙から・仏教の基本法理の理解・上

 さて、まず宜しければ、「一枚の紙」を読者の皆様方それぞれの手元にご用意下さい。それから本論は始まります。

 白紙の普通のコピー用紙でも構いませんし、大きさ、形状は特に問いません。

 ご用意できましたでしょうか。

 それではまず、私たちが「紙」と呼んでいるものにつきまして考えてみましょう。「紙」とは、字を書くために、筆記媒体として私たち人間が作り出して開発されたものであります。当然に自然界においては存在していません。

 紙の起源は、古代エジプトまでさかのぼり、「死者の書」が記されていることで有名であるカヤツリグサ科の植物の名である「パピルス」であります。英語で紙を意味する「paper」の語源は、この「papyrus」に由来しています。

 パピルスへの筆記は、主に葦《あし》のペンが用いられ、青銅製のペンも使われることもありました。

 パピルスは、手紙や簡単な文書の筆記には、大いに役立ちましたが、強度上の問題などがあり、多くの文章を記すには限界がありました。特に膨大な文章量を扱う仏典・聖書などを記す場合には、大変不向きであり、紀元前百五十年頃に中国で発明されたとされている今日私たちが普通に「紙」と呼んでいるものが、その後、世界中で利用されるに至ります。実質はこの中国での発明の「紙」が起源であるとも言えるでしょう。

 この「紙」の発明までは、古代エジプトの「パピルス」と同様に、古代メソポタミアの「粘土板」やインドの「椰子《やし》の葉」、中国・韓国・日本の「木簡《もっかん》」・「竹簡《ちくかん》」・「絹布《けんぷ》」などがありましたが、いずれも大量の筆記、長期保存、運輸には不向きでありました。

 中国での「紙」の誕生以降、色々と便利に使うために改良が繰り返される中、一四五○年頃、ヨーロッパにおいてグーテンベルグが活版印刷を発明したことで、印刷物が大量に造られるようになり、紙の需要は一気に増大、製紙技術も更に進歩し、現代私たちが使っている「紙」へと進化していったのであります。

 「紙」の原料は、植物繊維のセルロースが主成分で、セルロース間の水素結合によって構成されています。

 さて、「紙」について、主に筆記媒体として使われるものと述べて参りましたが、それを私たちは、段ボールなどのように箱として使ったり、ティッシュペーパー、トイレットペーパーとして使ったり、包装や折り紙として使われるなど、用途も多様になりました。現代社会においては、私たちの生活必需品として、「紙」は大いに役立っています。

 更には、私たちが普段「紙」と呼んでいるのは、もう少し詳しく述べると「セルロースの水素結合体」と先に述べましたように、セルロースは、元素記号、炭素(C)と水素(H)と酸素(O)の化学反応で構成されています。水素結合は水によってすぐに切れてしまう性質のため、紙は水に弱く、また燃やすとあっという間に燃えてしまうものでもあります。

 元が「紙」であったとしても、水に溶けてしまったものや、燃えてしまったものは、もう「紙」と私たちは呼びません。あくまでも「紙」とは、一時の化学反応体、先に挙げさせて頂きました用途で使う場合の時に「紙」と呼称しているだけのことであり、化学反応によって変化したり、また厳密に言うと分子・原子・中性子・素粒子の単位でもめまぐるしくダイナミズム(躍動)、生滅変化を繰り返しているものであります。

 私たちが普通に「紙」と呼称するものについて、「では、あと一万年後、百万年後にもそれは存在していると思いますか」と質問すると、ほとんどの人は、「もう無くなっている」とお答えになるでしょう。書いた内容も当然に残っていないと想像できることでしょう。もちろん特殊保存するなどすれば別ですが、普通の自然界の中において、そのままにしておけば、徐々に色は変わり、化学変化して腐食していき、また水に濡れたり、燃えたりすると、脆くも無くなってしまうものであります。

 しかし、それは何も百年後だから、一千年後だから急に起こる変化ではありません。実は瞬間、瞬間においてさえも、既に分子・原子・中性子・素粒子の単位でもめまぐるしくダイナミズム(躍動)、生滅変化を繰り返しているため、これが「紙」とピタッと止めて「紙」とすることは、実は瞬間でさえもできず、永遠にあるものでは無く、永久に変わらないものでもありません。

・・第二章、次に続く・・

〔本文、不許複製・禁無断転載〕

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